1年生のためのキャリア教育『よのなか講座』実施レポート

記事公開日:2024年11月20日

伝習館高等学校では、11月13日に1年生対象の「令和6年度 よのなか講座」が開催されました。
多彩な分野で活躍する講師陣からの講義を通じて、自分の将来について考える機会となりました。

今回の講座では、全体会での基調講演に加え、分野ごとに分かれた8つの分科会が設けられ、生徒たちの興味や進路希望に応じて多様な職業の世界が紹介されました。

全体会での基調講演はスーダンから中継 !

講座の幕開けを飾った全体会では、伝習館高校第51回生の大曲由紀子氏が、スーダンでの人権活動について講演を行いました。
国連人権高等弁務官事務所スーダン国事務所に勤務する大曲氏は、現地からのZoomを通じて、生徒たちに国際社会における人権活動の重要性や、自身が歩んできた道のりを語りました。


大曲氏の講演は、決して遠い世界の話ではなく、「人権」という身近で普遍的なテーマが軸にありました。
特に、スーダンという紛争地での日々の活動を通して学んだ「人権の普遍性」や、「多様な背景を持つ人々に寄り添う姿勢」について話す大曲氏の言葉は、生徒たちの心に強い印象を残しました。


彼女のご両親も同じ会場で講演に耳を傾けており、母校での講演が特別なものだったことが感じられる瞬間でした。

【Memo】
スーダンはアフリカ北東部に位置する国で、人口は約4,500万人です。経済は農業や石油に依存していますが、内戦や政治的不安定により深刻な影響を受けている状況です。スーダンの内戦の歴史は長く、特にダルフール紛争や南北戦争が広く知られています。最近では2023年4月、スーダン軍と即応支援部隊の間で激しい戦闘が勃発し、多くの民間人が避難を余儀なくされています。この紛争は農業や商業を破壊し、飢餓危機をさらに悪化させています。また、内戦により深刻な人権侵害が発生しています。国連の報告によれば、政府軍と準軍事組織が性暴力や拷問を含む広範な人権侵害を行っており、戦争犯罪の可能性も指摘されています。
地図参照先
http://www.stampmates.sakura.ne.jp/map/crt-Sudan.html

8つの分科会での専門分野紹介

全体会後、分科会では8名の講師が登壇し、それぞれが専門とする職業のリアルな一面を紹介しました。
生徒たちは事前に行われた興味関心や進路希望に基づいて各講座に参加しました。
多岐にわたる職業の姿に触れることで、将来の可能性を広げる有意義な体験となりました。

分科会1では、久留米大学医学部看護学科の徳沢麻梨子氏による、医療現場での看護師の役割についてのご講演です。
德沢先生は自己紹介を基にして、患者と向き合い、健康を守る医療人としての使命感や日々のやりがい、さらには困難を乗り越えながら成長してきた自身の経験談を話してくださいました。看護職を目指す生徒にとっては、夢を具現化する具体的なアドバイスが満載の内容となりました。

【生徒感想】
「偉大な方」だなと思ったことが率直な気持ちです。看護師や教員としての経験が、今の職業に活かされていることが伝わってきました。自分の正直な気持ちを信じて好きなことを追求していける自分になりたいと思える貴重な時間でした。自分のために、誰かのために働く仕事に就き、楽しい人生を送れるようにこれから頑張っていきたいです。 5組 Iさん

分科会2では、農業機械メーカーである株式会社オーレックの代表取締役社長、今村健二氏が登壇。地方の農業を支える企業の取り組みや、最先端技術を取り入れた機械の開発秘話を語りました。生徒たちは、地域密着型のビジネスモデルに触れると同時に、仕事に対する心構えについて考える機会となりました。

【生徒感想】
今村先生の話を聞いて、「困難は自分が成長・変化できる貴重な体験だ」と意識を変えることが大切だと分かった。今村先生が商品の修理を極めたことで、新しい商品を開発したことから、たくさんのことをやって中途半端で終わるのではなく、1つのことを極め続け着実に進んでいくことで、自分の理想にたどり着くことができると知りました。私も最近、部活動で自分の納得のいくプレーが出来ず、自身を無くしてしまっていたけど、自分を成長させる時期と考え、春の大会までに技を磨いていきます。 4組 M君

分科会3では、料亭・旅館「三川屋」の代表である大和寿子氏が伝統的な日本文化の継承について講演。旅館業や料理業の奥深さ、そしてお客様に喜びと安らぎを提供するという使命について語りました。観光業や文化に関心のある生徒にとっては、伝統を大切にしながらも新しい価値を提供するための挑戦を学ぶ機会となりました。

【生徒感想】
「体力」「気力」「健康維持」は仕事だけでなく勉強にも欠かせないものだと気づけました。学生のときにしていた「準備をする」「計画を立てる」「時間を守る」などのことは将来の仕事にも繋がると学んだので、当たり前のことをしっかりとできる人になりたいです。自分を信じて失敗を恐れずチャレンジし、家族や友人など周りの人を大切にして相談できるようになろうと思います。 5組 Mさん

分科会4では、自衛隊佐賀地方協力本部の元本部長である古賀博彦氏が、安全保障や防衛の観点から平和の大切さについて語りました。自身の自衛隊での経験を通じて、困難な状況に立ち向かう勇気や仲間を守る責任感を強調し、生徒たちは厳しさとやりがいの両方に触れたようでした。

【生徒感想】
自衛隊は国家公務員58万8千人中、25万人と半分ほどを占めているとても人数の多い職種だと知りました。自衛隊は3種類あり、知り合いに海上自衛隊をされている方がいたので、少し知っていたけれど、危険な山などでの訓練は、過酷で大変だと分かりました。災害などの援助など、自衛隊の方々に支えられることで生活出来ていることに感謝していきたいです。 3組 Sさん

分科会5では、金融業界からFFC証券の大橋孝文氏が、金融市場や投資の基礎知識、リスク管理の重要性について解説しました。金融の世界に触れる機会が少ない生徒たちは、経済の基礎が社会全体に与える影響を知り、経済活動の理解を深めることができたようです。

【生徒感想】
日本では現金預金が多いけど、アメリカでは株式にする人が多いということが分かりました。投資や株式にすることで、利益が出ることもあれば、損をするリスクもあります。今日の講座で資産は長期少額分散が大事だと分かりました。自分も投資には関心があったので、大人になったらしっかり勉強をして、今日学んだことを活かしていきたいです。 4組 Y君

分科会6では、リクルート九州じゃらん編集長の長田佳子氏が観光業界やメディアにおける情報発信の役割について講義。情報を通じて地域の魅力を伝える仕事のやりがい、そして取材や記事作成の裏側について話し、将来メディア業界を志す生徒たちにとって刺激的な時間となりました。

【生徒感想】
今回の「よのなか講座」を通して、仕事を通じて得られるものもあることを初めて知りました。様々な出会い、新たな発見、無限の創造性など、この仕事をやっていたからこそ得られるものだと思います。私たちは勝手に自然と枠組みを作り、その中だけで何かしようとします。ですが、『大切なのは枠にハマらず、新しいやり方で人生を切り開いていくことだ』と学ぶことが出来ました。 1組 Kさん

分科会7には、株式会社gazの代表取締役CEOである吉岡泰之氏が、起業家としての挑戦や、社会に新しい価値を提供することの意義について語りました。ビジネスの世界での成功と失敗を分けるものや、自らの信念を貫く力の重要性を話し、生徒たちは企業家精神に感化されたようでした。

【生徒感想】
「想いをデザインで可視化する」という言葉が心に残りました。デザインはファッションデザイナーのように見た目を重視したものだと思っていたけど、編集や建築のように、設計と見た目を合わせたものをデザインということを知ることができて、視野を広げることが出来ました。私も吉岡先生のように自分の夢をもって、自分で選択をしながら自分の人生を楽しんでいきたいです。 2組 Tさん

分科会8では、九州大学病院救命救急センター副センター長の賀来典之氏が救命医療の厳しい現場と、命を救うための医療チームの協力の大切さについて語りました。医療に興味を持つ生徒たちは、救急医療の現実に触れ、命の尊さと医療人としての責任について真剣に考えさせられる内容でした。

【生徒感想】
私は、医療系の仕事に興味があり、胸骨圧迫などの言葉は知っていたけど、具体的にどうするものなのかは、よく知りませんでした。ですが、何かあったときは、今日の講演で教わった「強く、速く、絶え間なく」を意識して自ら実行するようにしたいです。また、全く考えたくないことだけど、もし自分の身に何かあったときに臓器移植をするかどうかの意思表示カードを書くようにしておきたいと思いました。 2組 Bさん

生徒たちの感想と今後の展望

「よのなか講座」に参加した生徒たちは、普段の授業では学べない実践的な知識や職業観に触れ、多くの刺激を受けました。


「いろいろな職業の話を聞くことで、自分の進路について真剣に考える良いきっかけになりました」「大学の進学先で迷っていたけれど、進学先の照準が定まりました」という感想が多く寄せられました。
また、「将来どんな仕事をしたいか考えるだけでなく、今から自分にできることを見つけたい」という声も上がり、各分野の講師から得た学びが確実に生徒たちの意識を変えていることが伺えます。

今回の「よのなか講座」は、生徒たちに職業選択の幅を広げると同時に、未来を見据えたキャリアビジョンを描く一助となる意義深い行事となりました。
≫当日の様子はココからご覧になれます。