ホーム  >  生徒会・部活動紹介 [ 文化部活動報告 ]
02|2020/03|04
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031



カレンダーと同期
【新着一覧】

2020年7月4日
飯江川をニホンウナギが育つ川にするために 令和2年第1回稚ウナギ放流会新着

2020年3月31日
ニホンウナギ稚魚の飼育環境におけるクスノキ落葉の役割と感染症について考える新着

2020年3月23日
自然科学部 ウナギの水槽に落葉を入れるとアンモニア濃度が減少することについて新着

2020年1月18日
飯江川をニホンウナギが育つ川にするための調査

2019年12月24日
令和元年度の締めくくり!伝習館高校自然科学部ニホンウナギ稚魚を124尾放流!

2019年12月21日
令和元年最後の石倉かごモニタリングで放流したニホンウナギを7尾再捕獲!伝習館高校以前科学部

2019年12月15日
矢部川シンポジウム「私たちの水環境」で伝習館高校自然科学部が発表

2019年12月8日
第5回全国ユース環境発表大会九州・沖縄地方大会に自然科学部「先生が選ぶ特別賞」を受賞

2019年12月7日
eco-1グランプリ最終審査会に伝習館高校自然科学部出場

2019年11月10日
伝習館高校自然科学部「全国アマモサミット2019みやぎ」に参加して

2019年11月4日
アースウオッチジャパン参加者とウナギ稚魚を173尾放流

2019年10月27日
ふしぎいっぱい自然探検隊,福岡県のボランティアに参加(主催:福岡県南筑後保健福祉環境事務所)

2019年10月23日
産卵のため海へ戻る直前の銀ウナギを柳川観賞魚センターから23尾購入し,二丁井樋で放流

2019年9月18日
伝習伝習館高校自然科学部 銀ウナギ(下りウナギ)を放流し,ニホンウナギの保全へ第一歩

2019年8月25日
伝習館で飼育したニホンウナギ稚魚442尾,柳川掘割に放流!

2019年8月23日
吹奏楽部 夏季合宿を行いました
伝習館高校自然科学部が放流したウナギが46cmに成長し釣り上げられた

2019年8月2日
伝習館高校自然科学部九州地方ユースSDGsフォーラムに参加

2019年7月27日
伝習館高校自然科学部京都大学森里海キャラバン芦生研究林ワークショップに参加

2019年7月20日
伝習館高校自然科学部と伝習館同窓会みやま支部共同の飯江川視察

2020年3月31日

ニホンウナギ稚魚の飼育環境におけるクスノキ落葉の役割と感染症について考える新着

はじめに

 伝習館高校では2014年にIUCNからニホンウナギが絶滅危惧ⅠB類に指定されたことを機にニホンウナギの保護を目的としたニホンウナギの特別採捕と飼育中の生態実験,および標識放流を始めた。21cm以下のニホンウナギの採捕は福岡県内水面漁業調整規則で禁止されているために九州大学農学部の望岡典隆先生に特別採捕を含めて指導していただいた。特別採捕したシラスウナギは,0.5g以上に成長したらすべて柳川掘割に放流した。

2017

死亡率40

飼育中の生態実験(落葉使った死亡率減少について)

私たちが水温を25℃程度に保ち冷凍アカムシを与えて飼育した。大切に飼育しているにもかかわらず,3階の実験室で飼育しているために水替えを十分できないことが理由で多くの個体を感染症によって死なせてしまった。その結果,2017年までは死亡率が約40%であったが,20184月に水槽に落葉を入れると死亡率が減少することを発見し,クスノキの落葉を入れて2018年の死亡率は18%に低下した。


2019年には飼育当初から落葉を入れてシラスウナギを飼育した結果,死亡率が0.7%まで下がり,しかも感染症に罹ったウナギ稚魚が1尾もいなかった。また,2019年はウナギ水槽の水替えを1度も行わないで,蒸発して減った水を補充しただけであった。この落葉の効果がウナギに与えた影響を明らかにするために,AQUALYTIC社製AL800分光光度計による水質分析を行った。

分光光度計を用いた水質分析から死亡率減少の要因を推定する

魚類の窒素排出物はアンモニアであり,アンモニアは有害であるためにウナギ稚魚の成長と健康に影響を与えていることが考えられる。従って,落葉を入れることでアンモニア濃度が低下するか調べた。また,アンモニア濃度以外に導電率(EC)pHを測定した。

実験に使ったシラスウナギは223日~25日に特別採捕した180尾である。水槽に水を入れた時間から実験を開始して約200時間後までアンモニア濃度を測定した。実験は22516時に開始した


 実験開始から23時間後にシラスウナギを180尾投入した。後実験開始75時間後にクスノキの落葉を75g投入した。落葉を入れる前はアンモニア濃度が0.88mg/Lであったが,76時間後,つまり落葉投入1時間後には0.76mg/Lまでアンモニア濃度が低下した。その2日後には0.03になり,その後0.030.04mg/Lで安定した。

 同様にクスノキの落葉を入れた水槽と落葉を入れない水槽でアンモニア濃度の違いを測定するために前述の実験と異なる方法で37日に実験水槽を設定した。落葉75gとシラスウナギ50尾を入れた実験水槽3セット(AC)とシラスウナギ50尾のみを入れた実験水槽3セット(DF),落葉75gのみを入れた対照実験(G),合計7つの実験水槽を準備した。AFに冷凍アカムシを3gずつ与え,水温を23℃~25℃に設定した。1週間後の313日にアンモニア濃度を測定した。

 
 ACの落葉を入れた水槽ではアンモニア濃度は0.03mg/Lで,シラスウナギのみを入れたDFの水槽では0.770.89mg/Lであった。落葉のみの水槽ではUnderrengeであった。このことからも,落葉を入れるとシラスウナギが排出したアンモニアの濃度が低下することが明らかになった。では,どのようなしくみでアンモニア濃度が下がるのか,クスノキの落葉に付着した細菌の働きでアンモニアを栄養塩に酸化してアンモニア濃度が低下したのだろう。自然界にはこのように生物が排出した有害な物質を他の物質に変えるシステムが準備されていると考えている。


 次に,実験開始から2週間後の319日にアンモニア濃度,pH,導電率を測定した。その結果を次の表に示す。測定前にはDF水槽でアンモニア濃度が相当上がっていることが予想されたが,Dでは0.14Eでは0.15Fでは0.37と予想よりも遙かにアンモニア濃度が低かった。とくに,Fでは320日に再度アンモニア濃度を測定すると0.04まで低下しており,落葉を入れた水槽とほとんど変わらない値を示した。経験上水質が悪化するとウナギの活動が低下し,立ち泳ぎをするようになる。すべての実験水槽では立ち泳ぎをするウナギが見られなかったことで,実験期間中実験水槽でウナギの健康状態も良好であると判断した。


 

 

では,どのような理由でアンモニア濃度が低下したのか,上左の写真(319日撮影)を見るとACでは緑色になっていないのにD~Fでは水槽の水が緑色になっている。また,320日に1日間でアンモニア濃度が10分の1に低下したFでは20日に特に他の水槽より緑色が濃くなっていた。では,緑色の水槽の正体は,上右の写真のケイ藻類や植物性プランクトンが増殖していたからである。現時点では確証に至っていないが,ケイ藻などの植物性プランクトンがアンモニア濃度の減少に関わっていることが考えられる。つまり,どこででも見られるような植物性プランクトンの増殖という自然の仕組みが有害物質の減少に関わっていることになる。これから実験を重ねてクスノキの落葉と植物性プランクトンの働きで水槽内の環境が整えられる証拠を生徒と探っていきたいと考えている。

では,なぜクスノキの落葉を入れると感染症に罹らなくなるのか

私が,なぜクスノキにこだわっているのか,それは,福岡県みやま市の江戸時代から続く内野樟脳で聞いた樟脳の効能を思い出したからだ。江戸時代から内野樟脳では船小屋のクスノキの葉や枝を集めて蒸気で蒸して樟脳を作っていたという。樟脳はオランダ語でカンフルという。死にそうなときでも元気にさせることを「カンフル注射を打つ」などと表現することがあるが,カンフルはかつて強心剤としても使用されたことがあったという。現在でも,衣類の防虫剤としての用途のほか,血行促進作用や鎮痛作用,消炎作用,鎮痒作用,清涼感をあたえる作用などがあるために,主にかゆみ止め,リップクリーム,湿布薬など外用医薬品の成分として使用されている。また,クスノキの葉を入れると水槽水が茶色く変色することからカテキンなども含まれることが予測される。このようなクスノキの葉に含まれる成分がウナギの感染症発症を抑制している可能性がある。そして,2014年頃行っていた地元のお年寄りの聞き取り取材で,有明海の海苔養殖の近代化に尽力された平河政行さんの話をヒントにした。平河さんは昭和40年代に熊本県水産試験所に勤務されていた太田扶桑男先生から「海苔の牡蠣殻培養の時に山の腐葉土を濾過した液を入れると病気に罹らない強い海苔ができる」という話を聞き,腐葉土の濾過液を使い,感染症に罹らない海苔の種を作られた。私たちにいろんな話をしていただいたたくさんの先人に感謝している。温故知新,先人が実践され,考えられたことが社会を変えるかもしれないと思っている。

20世紀の社会経済の発展によって生み出されたツケを,21世紀の社会の枠組みをデザインする若い世代が払わなくてはならなくなってきたが,昔から伝わる山の民,里の民,海の民が先祖から受け継いだ自然と共生して生活していた時代の知恵をもう一度拾い集めて社会の諸問題を解決する糸口にしなければならないと考えている。現在直面した新型コロナウイルスの感染拡大をいかにして封じ込めるかという問題も,案外自然の中の“もの”と“もの”の間の関係性の中に埋もれた何かからヒントを得て,科学の力でその利用法を見いだすという作業をすることで根本的な解決策が見つかるのではと考えている。新型コロナウイルスや,SARS(サーズ)やMERS(マーズ)などの新型ウイルスの誕生も人間生活がウイルスとの新しい関係性を作ったことによって,人類が今まで経験しなかったような新しいウイルスが人間の細胞に侵入するための鍵を持ったこと(突然変異)によって引き起こされたものだ。鳥インフルエンザウイルスは鳥類の細胞に侵入する鍵を持つが,普通は人間の細胞に侵入する鍵を持たないので人の細胞には感染できないことが知られている。このような理由で,例えば,地球では温帯域に人間の都市が集中しているが,地球の気候が変化してそれまでいなかった動物が侵入するとその動物と共生していたウイルスが人と接触する機会が増えることになる。このことが,本来人に感染できなかったウイルスが人に感染することができるようになるような突然変異を誘発したのではないか。つまり,気候変動によってウイルスと人の新しい関係性が生じたことが最近の新型ウイルス出現ラッシュの原因となったのではないかと考えている。

九州では照葉樹林を代表する常緑樹のクスノキも3月最初に葉を入れ替え赤く紅葉した古い葉を野や掘割に散らす。言い過ぎかもしれないが,このクスノキの落葉は野原に草木が芽吹き虫が活動をはじめる前にその場を生き物が生きることができるように整える作用があるのではないかと考えている。私たちは,自然が本来持っている関係性をちょっとだけお借りしてウナギの飼育下における感染症の予防に応用した。



福岡県立伝習館高等学校〒832-0045福岡県柳川市本町142
Tel:0944-73-3116 Fax:0944-73-6496
福岡県立伝習館高等学校
〒832-0045福岡県柳川市本町142
Tel:0944-73-3116  Fax:0944-73-6496
Copyright(C) Denshukan All rights reserved