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カレンダーと同期
【新着一覧】

2021年7月28日
吹奏楽部 校内サマーコンサートを開催しました新着

2021年7月25日
演劇部 引退公演を行いました

2021年7月22日
柳川掘割でニホンウナギを放流!&石倉かごモニタリング!&命をいただき、掘割の恵みに感謝する会!新着

2021年7月5日
第23回水大賞農林水産大臣賞受賞を柳川市長にご報告新着

2021年6月30日
みやま市長松嶋様と教育長待鳥様へ農林水産大臣賞受賞のご報告を行いました新着

2021年6月13日
自然科学部,ドローンを導入し,活動の幅を広げるぞ!新着

2021年6月12日
東京都立大学教授横山先生のZoomミーティングによるオンライン授業新着

2021年6月5日
三学会合同福岡大会2021でのポスター発表

2021年5月30日
立花いこいの森公園でホタルの観察会を行いました!新着

2021年5月3日
クスノキ落葉でミズカビ病が治癒した!自然科学部新着
船上から柳川掘割の護岸調査 自然科学部新着

2021年4月18日
第1回飯江川原流域“ウナギとホタルを人がつなぐ”広葉樹植樹祭 自然科学部!新着

2021年4月17日
第1回飯江川の石倉かごおよび電気ショッカーによる魚類の調査を実施 自然科学部!新着

2021年3月27日
柳川でホタル放流  私たちの水環境を守ろう!自然科学部の挑戦新着

2020年10月24日
石倉かごモニタリングで放流したウナギ3尾再捕獲!とアースウオッチジャパンとの放流!

2020年10月16日
「知事のふるさと訪問~福岡県の未来を語ろう~柳川編~」 自然科学部が描く地域創生

2020年10月10日
自然科学部 桜舞館小学校の子供たちと飯江川に石倉かごを設置し,ニホンウナギ稚魚の標識放流を行う!

2020年7月4日
飯江川をニホンウナギが育つ川にするために 令和2年第1回稚ウナギ放流会

2020年3月31日
ニホンウナギ稚魚の飼育環境におけるクスノキ落葉の役割と感染症について考える

2020年3月23日
自然科学部 ウナギの水槽に落葉を入れるとアンモニア濃度が減少することについて

2020年3月23日

自然科学部 ウナギの水槽に落葉を入れるとアンモニア濃度が減少することについて

シラスウナギの飼育下での感染症感染が落葉投入によって減少し死亡率が激減したことに関する考察

AQUALYTIC社製AL800分光光度計による水質分析からの死亡率激減の要因に対するアプローチ~

 

はじめに

 伝習館高校では2014年にIUCNからニホンウナギが絶滅危惧ⅠB類に指定されたことを機にニホンウナギの保護を目的としたニホンウナギの特別採捕と飼育中の生態実験,および,0.5g以上に育った個体の柳川掘割への標識放流を始めた。21cm以下のニホンウナギの採捕は福岡県内水面漁業調整規則で禁止されているために九州大学農学部の望岡典隆先生に特別採捕を含めて指導していただいた。元より,伝習館高校が立地する柳川市は川下りとウナギのせいろ蒸しを観光資源とした観光の町である。ウナギのせいろ蒸しは環境省の「香り風景100選」に選出され,将来に残すべき文化遺産だと考えている。また,うなぎ料理は江戸時代から続いている柳川の食文化としても重要である。従って,伝習館高校のウナギ研究は柳川市民からも歓迎され,市民からのたくさんのウナギ情報をいただくことができるようになった。このことで,私たちが放流したニホンウナギ稚魚の行方が分かり研究が進展した。

私たちは江戸時代に上水道として作られた柳川掘割をニホンウナギのサンクチュアリ(保護区)にすることでニホンウナギの絶滅を回避しようと考えている。柳川掘割は,高畑勲監督の映画「柳川堀割物語」で紹介されているように水と人の繋がりが江戸時代から続いている貴重な歴史資産であり,人工物である柳川掘割を使って絶滅に瀕した野生生物であるニホンウナギと人(社会)との新しい繋がりを再構築することができれば,人々が今もなお柳川掘割を大切に使っていることも含めて私たちの研究の価値を高めるものであると考えている。つまり,人の生活と野生生物の繋がりを紡ぎ直すことで,地域と野生生物双方が活気を取り戻し持続可能な地域社会の経済基盤と野生生物の種の持続的再生産が実現できると確信している。

矢部川流域におけるシラスウナギの特別採捕

シラスウナギの特別採捕は,大潮の3日間満潮の2時間,集魚灯に集まってきた個体を網で捕獲した。特別採捕許可証をいただいた20154月から行った。矢部川流域のシラスウナギ遡上データは私たちしか持っていないため学術的にも貴重である。以下に,私たちが特別採捕したシラスウナギのデータを載せる。


 

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飼育中の生態実験(落葉使った死亡率減少について)

私たちが特別採捕したシラスウナギは,実験室の60cm水槽で水温を25℃程度に保ち冷凍アカムシを与えて飼育した。大切に飼育しているにもかかわらず,3階の実験室で飼育しているために水替えを十分できない事が理由で多くの個体を感染症によって死なせてしまった。その結果,2017年までは死亡率が40%程度であった。ところが,20184月に水槽に落葉を入れると死亡率が減少することを発見した(下)



2019年には飼育当初から落葉を入れてシラスウナギを飼育した結果,死亡率が0.7%まで下がり,しかも感染症に罹ったウナギ稚魚が1尾もいなかった。2019年はウナギ水槽の水替えを1度も行わないで,蒸発して減った水を補充しただけであった。更に,落葉を入れた水槽と落葉を入れていない水槽で,ウナギ稚魚の成長を比較すると,4月~8月の合計30尾の1個体当たりの湿重量の平均が0.50g0.40gで,落葉を入れた水槽のウナギの湿重量の平均が0.1g重くなっていた。また,8月~11月では合計50尾の1個体当たりの湿重量の平均が0.65g0.40gで,落葉を入れた水槽のウナギの湿重量の平均が0.25g重くなっていた。エサは同じ量与えていたのに,湿重量平均に違いが現れたことからも落葉が飼育中のウナギ稚魚に何らかの影響を与えていることが明らかである。この落葉の効果がウナギに与えた影響を明らかにするために,AQUALYTIC社製AL800分光光度計による水質分析を行った。

AL800分光光度計を使った水質分析から死亡率激減の要因を推定する

20194月から落葉を入れた実験水槽と落葉を入れない実験水槽の水質を比較したが,最も違いが分かりやすいのがアンモニア濃度ということが判明した。魚類の窒素排出物はアンモニアであり,アンモニアは有害であるためにウナギ稚魚の成長と健康に影響を与えていることが考えられる。従って,落葉を入れることでアンモニア濃度が低下するか調査を行った。また,アンモニア濃度以外に導電率(EC)とpHを測定した。


 


                                ↑横軸は実験開始からの時間(h)

                                ↑縦軸はアンモニア濃度(mg/L

 

 落葉投入のタイミングは,AL800分光光度計の試薬の測定範囲が0.021.00mg/Lであることで,Overrenngeになる直前に落葉を入れた。落葉を入れる前はアンモニア濃度が0.88mg/Lであったが,76時間後,つまり落葉投入1時間後には0.76mg/Lまでアンモニア濃度が低下した。その後,2日後には0.03になり,その後0.030.04mg/Lで安定した。

実験開始75時間後,落葉を入れたばかりの実験水槽

 実験期間中pHは弱アルカリ性で安定していた。また,導電率はほぼ一定の割合で上昇していることから,水槽中のイオンの量が緩やかではあるが一定の速度で上昇していることが推測できる。このことから導かれる水槽内の物質の変化は,アンモニアが亜硝酸イオンまたは,硝酸イオンに硝化されていること,または,硝化の過程にあることが予想される。


 同様に落葉を入れた水槽と落葉を入れない水槽でアンモニア濃度の違いを測定するために前述の実験と異なる方法で実験水槽を設定した。落葉75gとシラスウナギ50尾を入れた実験水槽3セットとシラスウナギ50尾のみを入れた実験水槽3セット,落葉75gのみを入れた実験水槽1セット,合計7つの実験水槽を準備した。エサは冷凍アカムシを3gずつ与え,水温を23℃~25℃に設定した。1週間後にアンモニア濃度を測定した。



 

 A~Cの落葉を入れた水槽ではアンモニアの検出限界ギリギリの0.03mg/Lで,シラスウナギのみを入れたD~Fの水槽ではOverrengeギリギリの0.770.89mg/Lであった。落葉のみの水槽ではunderrenngeであった。このことからも,落葉を入れるとシラスウナギが排出したアンモニアの濃度が低下することが明らかになった。では,どのようなしくみでアンモニア濃度が下がるのか,最初の実験の導電率からは,窒素を大気中に逃す脱窒は起こっていないものと考えられるため,硝化細菌のはたらきによってアンモニアの硝化が疑われる(落葉を投入する前と後で同じ割合で水中のイオン(導電率)が増加していると考えられるので)が,現時点では確証に至っていない。

 経験上水質が悪化するとウナギの活動が低下し,立ち泳ぎをするようになる。7個の実験水槽では立ち泳ぎをするウナギが見られなかったことで,健康状態も良好であると判断した。

 次に,2週間後にアンモニア濃度,pH,導電率を測定した。その結果は次の表に示す。

 

 測定前にはD~F水槽でアンモニア濃度が相当上がっていることが予想されたが,Dでは0.14,Eでは0.15,Fでは0.37と予想よりも遙かにアンモニア濃度が低かった。3月20日には,Fの水槽の色が濃くなり,20日にアンモニア濃度を測定すると0.04mg/Lに低下していた。Fでは落葉を入れた水槽とほとんど変わらない値を示した。


写真は219日に撮影した実験水槽の様子である。A~C水槽は,1週間前から変化はないが,D~F水槽は10日ほど前から植物性のプランクトンが増殖を始めた。DとEが緑色になった1日後にFが緑色になった。つまり,Fの植物プランクトンの増殖が1日遅かったことになる。19日もFはD,Eに比べて緑色が薄いことが分かる。22019時にFを再度アンモニア濃度を測定したら0.04mg/Lであった。するとFのアンモニア濃度が10分の1に低下していた。そのとき撮影した水槽の様子である。


左から,D,E,F


左:E,右:Fアンモニア濃度:0.04mg/L

 

Fの緑が濃くなり,D,Eでは茶色く変色していた。このことからも,水槽中のアンモニアを植物プランクトンが吸収していることが考えられる。A~Cの水槽では緑の変色は観察できない。A~G水槽でウナギの健康状態は見た目では良好であると思われる。植物プランクトンの力を改めて感じた。今後も定期的にアンモニア濃度を測定することが必要だと考えている。植物性プランクトンのこの周期的な増減は昨年も観察していたが,アンモニア濃度を測定できるようになったのが夏以降であるため,アンモニア濃度との関係はまだ調査していない。今後濁度とアンモニア濃度の関係も調べる必要があると考えている。

F水槽の微生物について

以下の微生物を確認しました。2020321日 接眼ミクロメーターの一メモリは全て2.5




 

世界最小のウナギ稚魚の標識放流

以上のように飼育中の死亡率を低下させる実験を行い,結果を直ぐにフィードバックして特別採捕を行ったシラスウナギを0.5gになるまで飼育して,可能な限りたくさんのウナギ稚魚を柳川掘割にワイヤータグ(太さ0.2mm,長さ2mmの金属製の標識)を装着して放流した。201912月までにウナギ稚魚を3133尾柳川市立図書館前の柳川掘割に放流した。小さなウナギ稚魚を放流することは,捕食者による捕食のリスクがあるが,私たちが放流したウナギにマリアナ海溝周辺海域の産卵場所まで帰って種の再生産に貢献してほしいと考えているからである。養殖した成魚を放流しても産卵場所に戻ることができないという研究結果があるからだ。

このように小さなニホンウナギ稚魚を放流することで今まで59尾のニホンウナギ稚魚を放流直前に行っている石倉かごを使った生物モニタリングで再捕獲した。下表は,201912月の放流までの放流個体のサイズを表す。

柳川堀割の環境についての考察(水の流れと酸素を使った有機物の分解)



 私たちは,ウナギの水槽だけの水質を測定しているのではない。柳川掘割をニホンウナギのサンクチュアリ(保護区)にするために,柳川掘割の水質もチェックしている。しかし,COD測定用の試薬が不足したため十分な結果を出すことはできなかったが,右図赤で示した二ツ川(柳川掘割に水を引き込む唯一の導水路で,水の流れがあり,水の匂いもしない。EC:110180μS)伝習館高校野球場北側(掘割の主要水路で,流れはほとんど無く,夏はやや腐敗臭のような匂いがするときもある。EC:170210μS),雁喰(掘割を緩やかに流れた水が集まり南部の水田地帯に供給されるため流れがあり,水が透きとおっている。匂いは全くない。EC:130150μS)3ヶ所で定点調査を行った。ちなみに,水道水のECは150200μSである。通常は,COD値は全ての箇所でUnderrenge(私たちが購入した試薬では5150mg/Lの範囲で測定できるので,5mg/L未満)であった。ところが,2020222日堀の水を落とし堀の底を日光に当て,空気にさらす堀干しの時に,二ツ川で6.3mg/L,野球場北で12.1mg/L,雁喰で26.9mg/Lであった。このことは堀の流れが全くなくなると有機物を分解者が酸素を用いて分解することができないためにCOD値が高くなったことを示していると考えている。つまり,酸素を供給するための流れがあると掘割の環境を清浄に維持するほど分解者が酸素を使って有機物を分解するということが考えられる。


まとめと謝辞

この一連の研究によって,落葉と酸素が水環境にとって重要な役割を担っていることが示唆される。今後もこの研究を続けて私たち地球の生き物にとって重要な水の環境を清浄に保つために役に立つことができればと考えている。そして,対処療法的な環境改善ではなく森里海の連環がこれからの人類や地球の生き物にとって必要なことを発信していきたいと考えている。

 分光光度計AL800購入は,公益財団法人藤原ナチュラルヒストリー振興財団の助成金を使わせていただいた。AL800用試薬は(一社)北部九州河川利用協会の「令和元年度河川利用推進事業」の助成金を使わせていただいた。導電率計は,京都大学フィールド科学教育センターからいただいた。また,九州大学の望岡典隆先生,京都大学の山下洋先生,また,京都大学の徳地直子先生からは研究を進めるに当たり,多くのご指導をいただいた。多くの方に私たちの研究は支えられていることを感じている。私たちの研究にご支援をいただいた皆様に感謝している。

 

伝習館高校自然科学部の令和元年度の大会出場結果

 ・東アジア鰻学会主催公開シンポジウム「うな丼の未来7~ウナギのいま~」「優秀発表賞」(令和元年7月8日東京大学にて)
・第34回福岡県高等学校総合文化祭自然科学部門福岡県大会「優秀賞」(平成元年10月26日福岡工業大学にて)
・全国アマモサミット2019ミヤギ~海辺の自然再生高校生サミット発表(令和元年11月8日~10日宮城県塩釜にて)
・第8回イオンeco-1グランプ「奨励賞」(令和元年12月7日東京ビッグサイトにて)
・第5回全国ユース環境活動発表大会九州・沖縄地方大会「先生が選ぶ特別賞」(令和元年12月8日TKPガーデンシティPREMIUM博多駅前にて)
・矢部川をつなぐ会主催矢部川シンポジウム「私たちの水環境」 ~観光・地域産業・暮らし・防災・生き物~「発表・出演」(令和元年12月15日柳川市あめんぼセンターにて)
・京都大学フィールド科学教育研究センター森里海シンポジウムポスター発表「海賞」令和2年3月20日京都大学にて

 


福岡県立伝習館高等学校〒832-0045福岡県柳川市本町142
Tel:0944-73-3116 Fax:0944-73-6496
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